ほっと会の頼もしい相談役、W氏の本棚から

選りすぐりの図書を御紹介!


『くじけないで』

著者:柴田トヨ

2010年3月25日 初版発行

発行:飛鳥新社

定価(本体 952円)

 

99歳のアマチュア詩人の詩集

柴田トヨさんは、一人息子の勧めで90歳を過ぎてから詩作を始めたそうです。そして産経新聞「朝の詩」に投稿を続け、それらを編集し3月に出版されたのがこの処女詩集です。「プロでも数千部」といわれる詩の世界で23万部を突破したそうです。私は「流行りもの」には余り手を出さないのですが、たまたま本屋で手にし、パラパラとめくって一、二編読んだところ、心のひだに”ストン”! 誰もが感じていること、誰でもが持っている思いが、やさしい言葉で平易に語られています。(W)


『「平穏死」のすすめ』

著者:石飛幸三

発行:株式会社講談社

定価:1,470円(税込)

 

口から食べられなくなったらどうしますか

東京都世田谷区の特別養護老人ホームの石飛幸三医師は、認知症が進み、意識も薄れた高齢者が胃ろうで生かされる姿に疑問を感じ、今年2月に「『平穏死』のすすめ」(講談社)を出版した。家族と相談のうえ、入所者への造設をなるべく見合わせて、過剰な栄養や水分の補給を見直したところ、急変での死亡が減り、穏やかな老衰死が増えた。その実践例を紹介し、大きな反響を呼んでいる。(2010年12月14日 読売新聞)

 

この本は、今の医学界に大きな問題提起をしています。何としてでも延命させる医療が、本当にそのご老人には幸せなのか? 看取りの医学はいたずらに否定されたり、批判されたりしてしまうものなのか? 老人ホームの果たす役割は何なのか? 命の締め括りの時にどうしたいのか? を色々と考えさせられる本です。(W)


『認知症ぜんぶ図解』

著者:三宅貴夫

発行:メディカ出版

定価:1,890円(税込)

 

オールカラーで分かりやすい『認知症ぜんぶ図解』発行

日本における認知症家族会の草分けである「認知症の人と家族の会」の創立メンバーであり、長く医療の現場で医師の立場からさまざまな助言・発信をしてきた三宅貴夫氏による『認知症ぜんぶ図解』が、この3月、メディカ出版より発行された。

本書は、ほぼ正方形の形、オールカラーという、疾患の入門書としては異例のユニークな判型・構成になっており、難しい言葉にはフリガナを、そして解説も丁寧でわかりやすく、中学生くらいから幅広い年代に、認知症に親しんでもらうための格好の入門書となっている。(2011年3月29日 ケアマネジメントオンライン)


『ブログ認知症一期一会』

著者:水木 理

編集:社団法人認知症の人と家族の会

発行:クリエイツかもがわ

定価:1,896円

 

認知症本人からの発信

水木さんは、平成17年(2005年)3月に認知症と診断されたそうです。当時、お歳は68歳でした。その年の11月からブログを始められました。ブログには、日々の生活や思いが綴られ、今も更新が続いています。本書には、平成19年までの2年間の記事から100本が厳選され編集されています。(W)


『カモメに飛ぶことを教えた猫』

著者:ルイス・セルプベダ

訳者:河野 万里子

発行:白水社

定価:840円

 

八歳から八十八歳までの若者のための小説

この作品は、1996年に出版され、ヨーロッパでは「八歳から八十八歳までの若者のための小説」とうたわれ、大ベストセラーになったそうです。日本語版は、1998年にフランス語版から翻訳され出版されました。

主人公は、肥った真っ黒な猫のゾルバとその仲間たち。場所はハンブルグの港町。ある日、ゾルバのもとに、突然一羽のカモメが落ちてきました。見ればタンカーが吐き出した原油にまみれ瀕死の状態。その最後の力を振り絞ってカモメは卵をうみ、ゾルバに三つの約束を迫ります。卵を食べないこと、ひなが孵るまで、卵の面倒をみること、そして、ひなに飛ぶことを教えること。ゾルバはこの三つの約束を守ると誓います。

「いや、おかしくはない。ぼくはただ、港の猫の名誉を守り抜こうとしているだけだ。ぼくは臨終のカモメに、ひなに飛ぶことを教えると約束した。その約束をはたそうとしているだけだ。どうすればいいのかはまだわからない。でも、約束は、きっとはたす」

ゾルバは信頼のおける港の猫たちと共に、知恵を絞り、必死に約束を果たそうとします。彼らは、約束を守り抜くことができるか・・・。

「・・・きみのおかげでぼくたちは、自分とは違っている者を認め、尊重し、愛することを、知ったんだ・・・」ゾルバがカモメの子に語ったこの言葉に集約された『愛』が全編を包み、読む者を心地よくさせてくれます。そして、ゾルバの最後の台詞にドキリとさせられます。ご一読をおすすめします。(W)